顎顔面外傷や口腔腫瘍切除、加齢による広範囲の付着歯肉の消失による口腔前庭の狭窄は、義歯やデンタルインプラントの使用を困難にさせ、患者の咀嚼機能を低下させる。現在口腔前庭狭窄における顎堤再建は、2次的上皮化法と遊離口蓋粘膜移植が主流であるが、前者は瘢痕治癒による再発や上皮化に時間がかかり、後者は採取できる粘膜に制限があることなどが問題である。本研究の意義は、異種細胞を使用せず、温度応答性培養皿上で作製した自己口腔粘膜上皮細胞シートを用いることにより従来の細胞シート移植方法と比較し、無縫合で、より短期間での創傷治癒を可能にする再生技術を確立することである。 1.イヌ口腔粘膜採取および口腔粘膜上皮細胞のシート培養 イヌ(ビーグル犬)に対し、全身麻酔下にて頬粘膜より口腔粘膜採取を行い、細胞数をカウントし、4×10^4cells/cm^2の初期播種密度にて、温度応答性カルチャーインサートに播種し約2週間の培養を行った。 2.イヌ口腔前庭狭窄モデルの作成 全身麻酔下に、局所麻酔後、下顎前歯(6歯)の抜歯を行う。次に、約20mm×10mmの口腔前庭粘膜(付着歯肉および口唇粘膜)を切除しモデルを作成した。 3.イヌ口腔前庭狭窄モデルへの口腔粘膜上皮細胞シート移植 口腔前庭拡張術を行った創面に培養口腔粘膜上皮シートを移植する。対照群と比較した。 4犬口腔前庭拡張術を行った創面に人工真皮を5-0ナイロンにて縫合し、対象群として用いる。 5.術後の評価 トレパンを用いて、術後4日、1週、2週、4週、7週とパンチbiopsyを行い対照群と比較検討した。 培養口腔粘膜上皮シートを移植した群の方が、対照群と比較し治癒の促進が見られた。
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