平成22年度において、慢性ストレスのモデルとして交感神経受容体のアゴニストであるフェニレフリンを長期投与する系(1日2回5日間腹腔投与)を設定し、唾液組成の面から唾液腺機能を検討した。その結果、フェニレフリン(α_1アドレナリン受容体刺激薬)を投与したマウス(PHE群)は生食を投与したマウス(CTL群)に比べて唾液中のタンパク濃度とカリクレイン活性値が有意に低下した。そこで、顎下腺組織の抽出液を二次元電気泳動により分離し、質量分析によりタンパクのスポットを検討したところ、カリクレイン22(mk22)とレニン2(Ren2)であることが明らかとなった。そこで、顎下腺におけるmk22とRen2のmRNA量をリアルタイムPCRで調べた結果、有意な差は認められなかった。このことから、mk22とRen2のmRNA量の合成能は低下しておらず、シグナル伝達が抑制されている可能性が示唆された。そこで次に、細胞内シグナル伝達(ERK1/2)の一つであるリン酸化特異的認識抗体であるp44/42 ERK1/2とPhospho-p44/42 ERK1/2を用いて、顎下腺と耳下腺におけるタンパク分泌のシグナル伝達が、どの程度リン酸化されているかについて調べた。その結果、PHE群はCTL群に比べてリン酸化される割合が低く、シグナル伝達が抑制されている可能性が示唆された。
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