口腔癌の持つ特性と変異遺伝子との関係を理解し科学的根拠を検証した上で、最も効果の高い治療法を選択する基準を確立するために、本研究では遺伝子発現と多型のバリエーションを分析し、それぞれの細胞特性を明らかにすることを目的とした。以下に研究項目とその結果を示す。 1.ヒト口腔癌培養細胞5株および正常上皮からRNAを抽出しcDNAを合成し、マイクロアレイを用いてアノテーション済みの遺伝子について、ゲノムワイドに遺伝子発現を網羅的に分析した。腫瘍部と正常部とで比較し有意に発現が上昇していたのは27遺伝子、逆に減少していたのは73遺伝子であった。それらのうち、平均値の差の大きいものから12遺伝子ずつリアルタイムPCRにより分析を行ったところ、発現上昇・低下の検証がなされた。したがって、少なくとも24遺伝子においてRNA発現に異常が見られることが示唆された。 2.ヒト口腔癌47症例および健常者47名から末梢血を採取し、DNAを抽出しSNPs多型解析を行った。既に今回の分析対象と異なる集団での口腔癌のcase-control studyをセミゲノムワイド(6800SNPs)に行って有意に多型分布率に差の見られた55SNPsについてのアレル頻度と、それらのハプロタイプ頻度の解析を行った。その結果、有意にアレル頻度に差が認められたのは、7番染色体とX染色体上の3SNPsであった。また、ハプロタイプブロックでは7番染色体と13番染色体上のハプロタイプ頻度に有意差が認められた。 以上の結果より、これらのRNA発現異常、多型頻度異常が口腔癌細胞特性にどのように反映されているか検証する必要があると考えられた。
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