研究概要 |
多能性を有する歯髄細胞の分化におけるmiRNAによる制御の機序を明らかにすることは、今後の再生医療における歯髄細胞の適用を考慮する上で重要と考える。そこで、歯髄細胞の内分泌細胞系譜への分化誘導を試み、分化過程におけるmiRNAによる分化制御を調べるため、miRNAの発現を網羅的に解析した。抗インスリン抗体の蛍光を指標にインスリンを産生する歯髄細胞由来の分化した細胞を観察すると、インスリンは細胞質に局在することがわかった。リアルタイムPCRによる定量的発現解析で、Ins1,Ins2は、各々、約7倍の発現上昇が認められた。歯髄細胞の内分泌細胞系譜への分化誘導過程で経時的にtotal RNAを調製した。誘導前と誘導後から調製したRNAを等量ブレンドしてReferenceとした。miRCURY LNA^<TM> microRNA Array(EXIQON)を用いて,成熟型miRNA発現の網羅的解析を行い,miRNA発現プロファイルを作成した。Scatter plot図による解析からsample群のシグナル強度の分布に大きなバラつきはなく、サンプル間のプローブのシグナル強度に顕著な差が認められなかった。348個のプローブから、分化誘導により有意な発現変動を認めた、発現比が2倍以上または1/2倍以下のものを絞込み、28個のmiRNAを抽出した。さらにmiRBaseに登録されているデータベース検索による絞込みで8個のmiRNAを抽出した。そのうち、7個は約2.0倍以上の発現上昇が認められた。1個は約40%以下の発現低下が認められた。一方、インスリン分泌腺組織の発生において分化制御に関わることで知られているmiR-375およびmir-9については各々、約95%と約64%の発現低下であった。これら重要な役割を担う既知のmiRNA以外の新規のmiRNAが存在する可能性が示唆された。
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