研究概要 |
歯髄細胞の内分泌細胞系譜への2つの分化誘導系を試み、分化過程におけるmiRNAによる分化制御を調べるため、miRNAの発現を網羅的に解析した。microRNA Arrayを用いて,分化誘導により統計的に有意性をみとめた、発現比が2倍以上または1/2倍以下のものを絞込み、miRBaseに登録されているmiR-183,miR-140を含むmiRNAを抽出した。miR-183の発現は分化誘導後に約0.4倍の低下が認められた。膵β細胞株で高発現していることが知られているmiR-140の発現は分化誘導後約2.4倍の上昇が認められた。mi-183の標的遺伝子を候補として242個抽出し、膵β細胞の分化に重要な働きを示すForkhead boxo1(Foxo1)に焦点を絞り解析を行った。Ins1,Ins2の発現が、各々約7倍の上昇した分化誘導条件下で、Foxo1の発現は約2倍上昇していた。インスリンの発現は細胞質に局在していたが、Foxo1は核と細胞質に局在していた。Foxo1は胎生早期には全膵細胞に発現し、分化とともに内分泌細胞に限局するようになり、最終分化した膵β細胞にのみ発現する。インスリンとFoxo1が発現している細胞では膵β細胞への分化が示唆された。Foxo1は核で転写因子として働くが、インスリン情報伝達経路にあるAktによりリン酸化を受けて細胞質へ移行する。分化誘導された歯髄細胞由来のインスリン産生細胞では、インスリン発現量およびFoxo1リン酸化の程度によって、Foxo1が核や細胞質に局在すると考えられる。分化誘導された歯髄由来細胞には、miRNAによって制御されている膵β細胞の分化に重要な分子の発現上昇および膵β細胞に特異的なmiRNAの発現が認められ、歯髄細胞が内分泌細胞系譜へ分化誘導できることが示された。
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