研究概要 |
腺様嚢胞癌(ACC)は極めて緩徐な発育と著明な浸潤性増殖,早期の血行性転移を示す.ACCは固形癌のなかでも,浸潤・転移において特異な性質をもっており,血行性転移の制御は患者の予後を大きく左右する.一酸化窒素(NO)は腫瘍において,血管新生を含む多岐にわたる局面で生理活性を有するラジカルである.われわれはNOおよびその合成酵素である一酸化窒素合成酵素(NOS)のACC血行性転移との関わりについて検討したいと考えている. (1)ヒトKB癌細胞にCOX-2遺伝子を導入し得られた浸潤,転移,造腫瘍能の増大した細胞を用いて,NOS(誘導型NOS:iNOS、内皮型NOS:eNOS)およびiNOS阻害剤の抗腫瘍効果について比較検討を行った.NOS阻害剤(iNOS、eNOS)としてL-NAME,iNOS阻害剤として1400Wを用いた.その結果,in vitroにおいて両阻害剤において細胞増殖抑制効果が見られた.NOS阻害剤,特にL-NAMEの抗腫瘍効果を認めた.ヌードマウス移植腫瘍においてはL-NAME,1400Wのいずれにおいても腫瘍増殖の抑制を認め,L-NAMEにおいて有意であった.免疫染色において、eNOS発現はL-NAMEで有意に抑制された.NOS阻害剤,特にL-NAMEの抗腫瘍効果を認めた. (2)腺様嚢胞癌由来の高転移能を有するヌードマウス未分化癌に対するNOS阻害剤の腫瘍抑制効果および転移抑制効果を検討した.上記と同様にNOS阻害剤を用いて比較した.その結果,1400W投与はアポトーシスを誘導し,腫瘍の血管新生や増殖を有意に阻害することを確認した.また,肺転移はみられなかった. さらに,ケモカインレセプターCXCR4を含めた転移抑制効果について検討する予定である.
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