研究概要 |
一酸化窒素(NO)は腫瘍において,血管新生を含む多岐にわたる局面で生理活性を有するラジカルである.われわれはNOおよびその合成酵素である一酸化窒素合成酵素(NOS)のACC血行性転移との関わりについての検討を目的とした.また,ケモカインレセプターCXCR4は癌の転移における細胞の遊走や播種において中心的役割を担っている.そこで,ヌードマウス可移植性口底腺様嚢胞癌株の高転移能を有する未分化癌(ACCIM)ヌードマウスモデルにおけるNOS阻害剤とCXCR4拮抗剤および併用療法の効果について検討した. ACCIMをヌードマウス皮下に移植し,腫瘍径が10mmになった時点で(a)PBS(コントロール),(b)AMD3100(CXCR4拮抗剤),(c)L-NAME(NOS阻害剤),(d)1400W(iNOS阻害剤),(e)AMD3100+L-NAME,(f)AMD3100+1400Wによる腹腔内投与を連日行った.5週目に投与を中止し,各群9匹のうち5匹を屠殺し,組織を摘出した.その結果,(b),(c),(d),(e)群で腫瘍増殖は(a)群に比較してそれぞれ20,27,54,50,52%抑制された.免疫組織化学染色が(a)群と比較して(e),(f)群は腫瘍細胞におけるCXCR4,eNOS,iNOSの発現が減少し,TUNEL法ではアポトーシスの増加を認めた.腫瘍間質におけるMVD(微小血管密度)は(a),(b),(c)群に比較して(d),(e),(f)群において有意に減少を認めた.肺転移に関しては(a),(c)群において4/4匹に転移を認め,(b),(d),(e),(f)群には認めなかった. 上記の結果より1400WやAMD3100+L-NAMEの併用療法はアポトーシスを誘導し,ACCIMにおける腫瘍の血管新生や増殖を阻害すること,さらにCXCR4は転移,iNOSは腫瘍増殖および転移に関連する因子であることが示唆された.
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