研究概要 |
(1)舌癌の切除検体より、レーザーマイクロダイセクションにより各検体の癌部、上皮異型性部および正常上皮部を切り出し、DNA, RNAを抽出し、網羅的解析を行った。DNA解析により、舌癌において数的異常の頻度の高い染色体を6種類選択し、FISHにてさらに口腔癌多検体を対象に解析を進め、第7、9、11番の3種類の染色体が、染色体不安定性(CIN)の評価に適していることをみいだした。さらに、この3種類の染色体セントロメアをプロープとしてFISHを行い、CINを評価する方法を開発し、CINの程度が、口腔癌の再発・予後と関連していることをみいだし、論文として発表した。(BMC Cancer 10 (1) 182 2010) (2)RNA解析では、上皮異型性を癌に近いタイプと正常粘膜に近いタイプの2種類に分類しえる遺伝子群を17種類同定した。さらに、これらの遺伝子の発現をリアルタイムPCRにて確認し、癌化にともない発現が上昇する2種類の遺伝子と、低下する1種類の遺伝子に着目し、免疫染色や細胞株を用いた機能解析を行った。さらに、その内、癌化に伴い発現が上昇する1つの遺伝子について、口腔癌、白板症などの口腔癌前癌病変、および正常口腔粘膜について免疫染色にて発現レベルを解析した結果、同遺伝子が口腔癌の発癌に深く関与していることが判明した。現在、論文作成中である。 (3)口腔癌における頸部リンパ節転移の有無は重要な予後因子であり、さらに、その内、リンパ節転移巣において被膜外浸潤を呈する症例の経過は著しく不良であることを追認した。さらに、口腔癌原発巣におけるEGFR遺伝子コピー数の異常が、頸部リンパ節転移巣の被膜外浸潤の有無と有意に相関していることをみいだし、口腔癌原発巣における同遺伝子のコピーを調べることにより、転移巣の被膜外浸潤を予測し得る可能性を示した。(Br J Cancer 104 (5) : 850-855, 2011)
|