研究概要 |
AuroraキナーゼはG2/M期特異的に活性化するセリン/スレオニンキナーゼである。ほ乳類には3種類(Aurora-A,Aurora-B,Aurora-C)が存在しAurora-Aが中心体に局在して中心体の成熟や分裂期での紡錘体極の働きを制御するのに対し,Aurora-B/Cはセントロメア内側からダイナミックに局在を移行しながら染色体の均等分配や細胞質分裂を制御する。またいずれも癌遺伝子としての側面も有し,乳癌や大腸癌を始めとするヒトの癌腫でAuroraの過剰発現が報告され標的タンパク質の過剰なリン酸化が癌形質の維持に重要な役割を果たしていると考えられている。口腔扁平上皮癌においてAuroraを標的とした治療戦略を考える上でAuroraの分子背景(発現パターン,活性化機構)および病理学的意義の解明を目的に口腔扁平上皮癌細胞株HSC2,3,4を使用して、まず各Aurora発現状況をイムノブロット法にて解析した。具体的には細胞周期同調(double-thymidine法)後,時間毎に試料を回収し,細胞周期における各Auroraの遺伝子及びタンパク質発現量の変化を調べた。次にGFP融合の各Auroraタンパク安定発現扁平上皮癌細胞株の樹立を行なった。細胞株はHSC2,3,4の内、Auroraを最も安定的に発現していたHSC3を選択し、蛍光顕微鏡下に経時的観察が可能となった。他細胞株の共焦点レーザー顕微鏡を駆使したタイムラプス顕微鏡観察も行い、各Auroraの細胞内動態をリアルタイムに可視化することに成功した。さらに口腔扁平上皮癌臨床症例における各Auroraの発現について、免疫組織染色を用いて発現解析を行いAuroraが有効な分子標的である可能性が示された。
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