研究概要 |
癌細胞が、細胞表面にMICA (MHC class I chain-related molecule A)を発現しているにもかかわらず、NK細胞などMICA-NKG2Dを介した免疫監視機構から逃れ、排除されないのは何らかの免疫回避システムが存在していることが考えられており、その免疫回避システムの1つとしてsMICA (soluble MICA)が報告されている。 そこで、当科で樹立したOSCC細胞株でWestern Blot法およびNorthern Blot法を用いて細胞抽出液中のMICA蛋白およびMICA mRNAの発現を検討した。その結果、いずれのOSCC細胞株もMICA mRNAを同程度発現していたが、Western Blot法の結果からKO細胞ではMICA蛋白の発現は非常に低いことが明らかになった。一方、ELISA法を用いて培養上清中のsMICA濃度を検討した結果、sMICAの産生量はKO細胞において、最も高いことを明らかにした。さらに、無血清培養系でKO細胞を大量培養し、培養上清中から抗MICA抗体結合アフィニティーカラムを用いてKO細胞が産生するsMICAの精製を行った。精製sMICAを脱糖鎖処理し、Western Blot法で検討したところsMICAの分子量は24000であった。精製したsMICAをMALDI/TOF-MSにより質量解析を行い、MICA分子と一致するアミノ酸配列を検索した結果、sMICAは、MICA分子のα3ドメインの中央付近で切断されている可能性が考えられた。同領域でMICA切断能を有する蛋白分解酵素について検討し、MMP-3とMMP8とMMP-2/9の3つのMMPsが候補として考えられた。また、それぞれ産生されるsMICAの分子量は20600,21100,24200と予測され、MMP-2/9が最も関与している可能性が考えられた。
|