われわれは、これまでの研究で口腔癌において共通して発現亢進し、その増殖を支持する癌遺伝子としてAkt1を同定し、さらにAkt1を特異的に標的とする超効率型合成small interfering RNA (siAkt1)を見出した。本研究では、Akt1を分子標的とした新規口腔癌治療法の確立のためにsiAkt1の臨床応用を目指して、その抗腫瘍効果予測法の開発を試みた。まず、口腔癌ヌードマウス背部移植腫瘍より腫瘍細胞を分雑し、分離した腫瘍細胞にsiAkt1を導入後、アテロコラーゲンゲル中にて培養した。7日間無血清培養したのちWST-8を添加し、吸光度を測定することにより細胞数を評価した。対照群とsiAkt1処理群の吸光度を比較検討したところ、siAkt1の著明な抗腫瘍効果が確認できた。つづいて、培養ヒト口腔扁平上皮癌細胞に標的配列の異なるsiAkt1を2種類個々に導入し、48時間後にtotal RNAと蛋白質を抽出し、Akt1の蛋白質発現抑制率をWestern blot法にて評価した。80%以上の抑制効果が得られていることを確認したのちに、そのtotal RNAを用いてマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、標的配列の異なるsiAkt1導入群に共通して認められる発現変動遺伝子で、かつ可溶性分泌蛋白質をコードする遺伝子の一つとしてOsteopontinを同定した。以上の結果より、口腔癌患者の腫瘍組織あるいは血清Osteopontin値よりsiAkt1の抗腫瘍効果を予測できる可能性が示唆された。
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