研究概要 |
本年度は、主として培養細胞を用いて研究を行った。前年度十分な結果が得られなかった分を再検討するため、臨床検体を用いた研究を最初に行った。臨床検体では、対象は、われわれの施設で治療を行い病理組織学的に扁平上皮癌と診断され、臨床データの揃った120症例とした。パラフィン包埋切片より薄切切片を作製し、各種の抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。血管内皮細胞増殖因子VEGF-Aとリンパ管増殖因子VEGF-Cの発現と臨床病理学的因子との関連を明らかにする目的に、抗体としては抗VEGF-Aおよび抗VEGF-C抗体を使用した。VEGF-Aは63%に発現し、VEGF-Cは、67.5%に発現していた。VEGF-Aは腫瘍の大きさおよび年齢と有意な相関性が認められ、VEGF-Cは臨床的および病理組織学的因子との間に有意な相関性は認められなかった。培養細胞としては、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株7株(SAS,HSC-2,HSC-3,HSC-4,SCC-25,OSC-20,Ca9-22)を用い、10%FBSを添加したD-MEM/Ham' sF12で培養した。96 well plateに1.5×10^3個/wellで24時間培養後、段階的に希釈したmTOR阻害薬(everolimus)で72時間処理した後、MTTassayにて評価した。すべての細胞において濃度依存的に、細胞増殖能が抑制されていた。その中で、mTOR経路関連因子の発現変化の解析するために最も感受性の高い細胞株(SAS)を選択した。everolimus IC50 (3.65nM)前後の濃度で24時間処理した後、Western blottingにて評価した。mTOR,HIF-α,VEGF-AおよびVEGF-Cの抗体を用いてWestern blottingをおこなったが、SAS細胞においてはmTOR経路関連因子の濃度依存的な発現低下が認められた。
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