研究概要 |
薬物代謝酵素の発現とmTOR-HIF1α経路の発現について研究を行い、分子標的治療のターゲットとなりうるかについて検討した。 1.薬物代謝関連酵素の発現解析 病理組織切片において,マーカーを用いてSP細胞を同定し、TS,DPDおよびOPRTの発現を免疫組織化学的に解析した。同時に臨床的なデータを解析し,抗癌薬の有効性ならびに耐性について検討した.また、リンパ節転移因子であるKAI1についても研究を行い、TSとの相関性があることを確認した。 2.SP細胞におけるmTOR,HIF1αおよびVEGFの発現解析 上記のごとく、病理組織切片においてマーカーを用いてSP細胞を同定し、mTORおよびHIF1αの発現を確認した。あわせて血管内皮細胞増殖因子であるVEGF-AおよびVEGF-Cについても検索し,その関連を検討した。VEGF-Aは63%に発現が認められ、VEGF-Cは67.5%に発現が認められた。mTOR(+)HIF1α(+)VEGF-A(+)においては、腫瘍のステージとがん細胞浸潤度に強い相関を持っており、mTOR(+)HIF1α(+)VEGF-C(+)においても腫瘍のステージ、リンパ節転移およびがん細胞浸潤度と強い相関を持っていた。これらのことからSP細胞発現とmTOR-HIF1α経路の発現には正の相関性があり、なかでもVEGFの発現がみられるものは、がん細胞の悪性度と相関し、分子標的のターゲットとなりうることが示唆された。
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