我々は、口腔癌の浸潤・転移との関連が報告されている染色体7qのLOH範囲7q32に位置するmicroRNA(miRNA)であるhas-miR29b-1と口腔扁平上皮癌(OSCC)との関連を検討するとともに、has-miR29b-1によるdown-regulateが予測される遺伝子として7q31に位置する癌遺伝子であるc-Metに着目し、両者とOSCCとの関連を検討した。 対象として44例のOSCC手術材料を用い、has-miR29b-1の発現をRT-PCRにて検討した。c-Metの発現は免疫組織化学に検討した。さらに、E-cadherinおよびVimentinの発現を免疫組織化学的に検討することで上皮間葉移行(EMT)について評価するとともに、has-miR29b-1、EMT、c-Met発現とその他臨床病理学的因子との関係について検討を行った。次にhas-miR29b-1の発現を浸潤・転移能の異なるOSCC細胞株HSC3、HSC4、KONを用いqRT-PCRにて検討した。 OSCCにおいて、臨床病理学的検討よりhas-miR29b-1とc-MetはEMTと関連を認めたが、両者には直接の関係を認めなかった。has-miR29b-1とc-Metの両者高発現群では転移・再発が高く、かつ各々単独に比べ相乗効果を認めた。また、c-MetsiRNAにてhas-miR29b-1の発現を検討した結果、細胞株においてもc-Metとhas-miR29b-1との間に直接な関連は認めなかった。 c-metは癌組織にてcadherinとβcateninの結合機能を低下させ、細胞接着機構を破綻させ、EMTを促進させるという報告がある。また、Databaseにおける検索結果より、has-miR29b-1のtarget geneとしてEpCAMが挙げられている。このことより、c-MetはE-cadherinの低下により、かつhas-miR29b-1はEpCAMの低下によりEMTに関与している可能性が示唆された。
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