研究概要 |
我々は、リコンビナントTRAILが扁平上皮癌細胞にアポトーシス誘導することを示した(Int J Oncol 30:1163-1171,2007. Oral Oncol 44:361-368,2008. Oncol Rep 25:645-652,2011)。 好中球由来TRAILが白血病細胞に対して抗腫瘍効果を発揮することが示された(Cancer Res,64:1037-43,2004)。しかし、固形癌への関与については明らかにされていない。近年、BCG免疫療法によって好中球由来TRAILが尿路上皮癌に対して抗腫瘍効果を亢進させることが明らかになった(Cancer Metastasis Rev,28:345-53,2009)。 そこで、内因性TRAILとして好中球に着目し、以下の結果を得た。末梢血由来好中球はTRAILを産生、インターフェロンαやβの添加で産生の促進がみられた。好中球からのTRAIL分泌のみならず膜上への発現増加もみられた。更に、培養上清は扁平上皮癌細胞にアポトーシス誘導を示し、抗DR4や抗DR5などの中和抗体の存在下でアポトーシスは減少した。扁平上皮癌細胞と好中球の供培養でも同様の結果が得られた。以上のことから好中球由来TRAILは扁平上皮癌細胞に殺作用を示すことが示唆された。次に、OK432は好中球のTRAIL産生には影響を与えなかったが、C5aやFMLPと同等の走化性因子であることが確認された。下室に扁平上皮癌細胞とOK432、上室に好中球を加えた系では、OK432の非添加に比べて顕著に扁平上皮癌細胞にアポトーシスが誘導された。これらの結果から、OK432によって好中球が遊走し癌細胞との接触によって、膜上のTRAILもアポトーシス誘導することが判った。 扁平上皮癌細胞は好中球、インターフェロンとOK432の存在によってアポトーシス誘導が亢進されることが示唆された。
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