研究概要 |
ヘパラナーゼ添加培養実験では培養120時間後までの試料を採取し組織学的観察を行った。培養歯根部Hertwig上皮鞘周囲にPCNA陽性細胞が観察され、上皮鞘周囲の間葉系細胞の増殖が示唆されたが、ヘパラナーゼの影響観察には長期間の培養が必要と考えられた。apical spaceへのヘパラナーゼ結合ビーズ埋入モデルマウス実験では、ビーズ埋入30日目までの組織学的観察を行った。ビーズは歯根膜様線維性結合組織内に観察され、特に、埋入7日目にはビーズ周囲の細胞がPCNA局在を示し、さらに、ビーズ表層の一部に硬組織様基質が観察された。これらのことより、ビーズ周囲の間葉系細胞の増殖が惹起され、象牙質、セメント質、歯槽骨といった歯・歯周組織を構成する硬組織形成細胞へと分化した可能性が示唆され、これにはビーズから放散されたヘパラナーゼの関与が推察された。幹細胞の生体組織再生への関与が広く知られているが、歯・歯周組織再生、特に象牙質修復においてapical spaceに存在する間葉由来幹細胞が関与することを明らかにし、論文にて報告した(Harichane,Y.,Hirata,A.,et al.Adv Dent Res2011)。一方、口蓋形成過程において口蓋突起癒合期上皮索へのヘパラナーゼ局在と基底膜パールカンの消失および口腔粘膜基底層細胞への強いヘパラナーゼ局在が観察された。これらより、口蓋形成および口腔粘膜の形成・再生・代謝・維持にヘパラナーゼが関与することが示唆された。また、昨年度に引き続き、Homeobox遺伝子に属すHoxc5の二次口蓋形成過程における局在を検索し、Hoxc5が口蓋突起の水平方向への伸長に関与する可能性について示し、第56回日本口腔外科学会総会(2011年・大阪)にて発表した。
|