研究概要 |
生体細胞を用いた細胞治療が一部で実用化しているが骨再生に関しては未だ実用化されるものはない.本研究ではマウスより間葉系幹細胞(MSC)を単離しin vitroで増殖後生体へもどし骨再生をはかる骨再生モデルの検討をおこなった. (1)MSCの供給元の検討:MSCが造血幹細胞のニッシェとして内骨膜に局在するとの報告を参考に,マウス大腿骨皮質骨と大腿骨骨髄をMSCの供給元として比較検討した.(2)MSC培養環境の検討:培地へLeukemia Inhibitory Factor (LIF),basic fibroblast growth factor (bFGF)を添加しMSC培養・増殖への影響を検討した.(3)骨芽細胞ゲルによるin vivo骨再生の検討:大量培養したMSCを骨誘導培地で骨芽細胞lineageへ分化させ,生体由来ゲルと混和しマウス皮下へ移植し骨再生能を検討した.(4)疑似骨髄モデルによるin vivo骨再生の検討:大量培養したMSCを骨誘導培地で骨芽細胞lineageへ分化させβTCP顆粒と混和しマウス皮下へ移植し骨再生能を検討した. これらの検討から皮質骨は骨髄よりも多くのMSCを供給すること,培地にbFGFを添加することにより有意にMSCの増殖能が上昇することがわかった.しかし得られたMSCを骨誘導培地にて骨芽細胞lineageへ分化させ生体由来ゲルと混和しマウス皮下へ移植した移植実験では骨再生は認めなかった.一方βTCP顆粒と混和した疑似骨髄モデルによる移植実験では骨再生をみとめた.GFPによる解析よりこの再生骨では骨細胞,骨芽細胞はドナー細胞由来であるが,破骨細胞,血管内皮はレシピエント由来であることがわかった.これらの方法と結果はMSCの理解と骨再生へのMSC利用に役立つものと思われる.
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