研究概要 |
1.顎変形症による表情変化の検討 二次元心理空間へのマッピングによる表情の位置づけ. (1)患者群の術後顔貌について正貌写真を用いRussell&Bullockらの方法に基づき快-不快,覚醒度の評定による二次元心理空間にマッピングをおこなった.術前との比較では,各表情においては有意な変化はみられなかった。 (2)無表情顔貌においては術前より若干,覚醒・快方向へシフトする傾向がみられた。 (3)健常群と顎変形症群の表情の位置づけに関して異なる傾向が見られたが,有意差は示さなかった。 2.側貌および斜位顔貌における表情識別に関する検討 (1)追加検証をおこなったが側貌は正貌写真と同様の二次元マッピングは困難であった。 (2)斜位顔貌写真は正貌とほぼ同様のマッピングが可能であった。 3.術後の顔貌について同様にマッピングを行い治療による変化を検討した (1)治療による顎骨の移動と表情変化の相関に関する検討:顎骨移動と表情変化に明らかな相関はみられなかった。 (2)治療による表情変化と健常群との近似性に関する検討:治療により健常群に近似してゆく傾向がみられた。 4.健常群と顎変形症群における,表情強度の比較 顎変形症患者は健常群と比較して各表情の表情強度が若干弱い傾向がみられた。 以上より疾患群において心理状態と表情の間に乖離は生じていないが,無表情において健常群より不快および眠りよりの表情要素が認められた。変形症の治療により無表情は若干健常側へ近づく傾向が見られた。顎変形症患者は各種表情においてはほぼ同様の表情認知度であったが,無表情において健常者より若干マイナスイメージを示す傾向があり,治療により改選する可能性が示唆された。
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