研究概要 |
本研究の目的は、歯科治療時の心血管系ストレスに対するATP感受性Kチャネル(K_<ATP>チャネル)の影響およびチャネルに対する静脈麻酔薬の作用を明らかにし、歯科治療時の心血管系ストレスに対する精神鎮静法に指針を与えることである。当初の方法は、褐色細胞腫細胞(PC12)を用いてストレス条件下でのK_<ATP>チャネル活性の変化を検討し、ストレス条件でK_<ATP>チャネル活性に及ぼす静脈麻酔薬の影響を検討することであった。 まず、培養ラット褐色細胞腫細胞(PC12)を用いてK_<ATP>チャネル活性の測定を試みた。蛍光色素を用いた蛍光法による膜電位の変化を測定したところ、K_<ATP>チャネル開口薬に反応する膜電位変化は、褐色細胞腫細胞では非常に弱く、測定レベルに達しないことが判明した。これは、培養継代に伴うチャネル活性の低下、腫瘍化に伴うチャネルの遺伝子発現レベルの異常等が考えられた。そこで本研究の目的を遂行するために,正常ラットから急性単離したプライマリ細胞(副腎クロマフィン細胞)を用いてチャネル活性を測定する必要があると考えられた。K_<ATP>チャネルはプライマリ細胞に発現し、ストレス刺激のカテコラミン分泌機序への関与が示唆されている。また、プライマリ細胞ではK_<ATP>チャネル活性の測定が可能であるとの報告がある。ただし、本研究の目的はストレス条件下での各種麻酔薬の影響を検討することである。そのため、褐色細胞腫細胞と異なりプライマリ細胞では異常興奮によるカテコラミン分泌(ストレス反応)が少なくストレス条件下での測定が困難である。そこで、慢性疼痛モデルであるストレス条件下ラットを作成し、プライマリ細胞のK_<ATP>チャネル活性に対する各種麻酔薬の影響を比較することで本研究の目的を遂行することが可能と考えられた。
|