研究概要 |
本研究の目的は、歯科治療時の心血管系ストレスに対するATP感受性Kチャネル(KATPチャネル)の影響およびチャネルに対する静脈麻酔薬の作用を明らかにし、歯科治療時の心血管系ストレスに対する精神鎮静法に指針を与えることである。当初の方法は、カテコールアミン分泌細胞を用いたストレス条件で静脈麻酔薬がKATPチャネル活性1に及ぼす影響を検討することであった。しかし、培養細胞ではKATPチャネルの膜電位変化は非常に微弱であり測定レベルに達しなかった。そこで、ストレス条件の動物モデルを作成し、プライマリ細胞を用いることとした。ストレス条件の動物モデルはラットを用いて慢性疼痛モデルを作成した。これはすでに手技の確立されている脊髄神経結紮損傷(SNLモデル)とした。坐骨神経を形成している第4~6腰部(L4~L6)脊髄神経のうち、L5とL6脊髄神経を絹糸できつく結紮することで作製する。このモデルの特徴は機械刺激性アロディニアが強く発症することである。慢性痛の評価は、足底部の機械的刺激に対する反応試験(Needle Hyperalgesia Response)、およびPlanter testで行った。術後7日目で痛覚過敏反応が認められた。このSNLモデルでは神経障害部位で,交感神経線維の分布の増加と疼痛への関与が報告されている。神経交感神経節の外科的切除による影響があり、後根神経節において、交感神経線維数と交慮神経線維に囲まれた神経細胞体数の増加が顕著である。そのため慢性疼痛モデルのひとつであるこのSNLモデルを用いることは交感神経系が関与するストレス条件の動物モデルとして有用であると考えられる。このストレス条件の動物モデルを用いて、静脈麻酔薬の影響を検討する。
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