研究概要 |
ストレス負荷により、青班核と大脳皮質前頭前野のノルアドレナリン,腹側被蓋野と側坐核のドーパミン神経活動が亢進した.次に,青班核にミダゾラムを持続投与しながらストレス負荷を行ったところ,ミダゾラムは,ストレスによる青班核と大脳皮質前頭前野のノルアドレナリン神経活動の亢進をほぼ抑制し,大脳皮質前頭前野のドーパミン神経活動を軽度抑制した。一方,青班核にゾルピデムを持続投与しながらストレス負荷を行ったところ,ゾルピデムは,ストレスによる青班核と大脳皮質前頭前野のノルアドレナリン神経活動の亢進を軽度抑制したが,ミダゾラムのように完全には抑制できなかった,また大脳皮質前頭前野のドーパミン神経活動は抑制しなかった. 腹側被蓋野にミダゾラムを持続投与しながらストレス負荷を行ったところ,ミダゾラムは,ストレスによる腹側被蓋野と側坐核のドーパミン神経活動の亢進をほぼ抑制した.一方,ゾルピデムを腹側被蓋野に持続投与しながらストレス負荷を行ったところ,ゾルピデムは,ストレスによる腹側被蓋野と側坐核のドーパミン神経活動の亢進をミダゾラムと同様にほぼ抑制した. 青斑核にミダゾラムとゾルピデムをそれぞれ20分間投与して,筋弛緩作用を検討したところミダゾラムは有意の筋弛緩作用を発現したが,ゾルピデムは筋弛緩作用を発現しなかった. 以上から,ベンゾジアゼピン系薬(ミダゾラム)と選択的鎮静薬(ゾルピデム)には,脳内ノルアドレナリン,ドーパミン神経系に対して異なる作用を持つことが明らかとなり,新たな精神鎮静法薬の開発に一つの方向性を見出すことができた.
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