研究概要 |
口腔領域における疾患の代表的な徴候である疾痛が,循環器疾患における虚血心筋や循環動態に与える影響について検討された研究はない.逆に,関連痛として心筋虚血のサインが口腔痛として表現されることもあり,口腔領域と全身状態との相互関係における詳細な検討が必要であると考えられる.我々はこれまで吸入麻酔薬をはじめとする薬物によるpreconditioning(PC:長時間虚血前の投薬が,続発する長時間虚血による心筋梗塞巣を劇的に縮小する現象)のメカニズムについて検討してきた.今回は視点を変えて,口腔領域における疼痛,とくに急性痛が虚血心筋ならびに再灌流障害に与える影響を検討し,その影響が心機能についてどのように関与しているのかを探る予定である.平成21年度は口腔急性疼痛モデルを作製することに終始した.雄性成熟モルモットを用い,ジエチルエーテル吸入下に麻酔を導入して,セボフルラン吸入麻酔下に気管切開後,レスピレータを用いて人工呼吸を開始した.下肢より静脈路を確保し,生理食塩液をシリンジポンプで投与し,パンクロニウムを持続投与して筋弛緩を得た.脳定位固定装置に固定後,Bregmaより側方および後方5mmの位置に骨小孔をあけ,脳波電極を挿入し,連続的に脳波モニタリングを開始した.4%セボフルランを吸入させてburst suppressionの出現で深麻酔状態ならびに脳波モニタリングの適切性を確認後,口腔底に針電極を挿入して100Hz,5-10V,15minの電気刺激を行い,脳波変化を観察した.さらに別の群では,ペントバルビタール腹腔内麻酔後に口腔底への電気刺激のみを2分間行ってホルマリン灌流を行い,三叉神経脊髄路角を摘出してERKのリン酸化を免疫染色にて確認した.以上の成果を受けて,今年度はこのモデルの適切性をさらに検証し,心筋虚血再灌流時の保護効果を研究予定である.
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