当該年度については、実際の歯の動きについてのシミュレーション検討を行うために、マイクロCTによる撮影を行ったものを組織学的所見との対応を行った。マイクロCTの撮影については、期間が限られていたため、おおむね解剖学的構造を網羅するために、歯と骨レベルでの検討を行うこととした。これより、当該資料の組織切片との比較において、骨部分について、皮質骨ならびに特に海面骨部分の骨梁の構造についての比較検討を行った。これについては、比較的細密な骨梁構造が抽出されたことから、三次元有限要素に対するモデル構築については、比較的良好な結果であることが検証された。一方、歯についてはエナメル質が脱灰されることから、やや両者の間に差異が認められる結果となったが、象牙質部分の有機成分は検出可能である事から、これを比較対象とすることとした。なお、個別の要素データについては、骨梁については比較的細密な部分まで検証されるものの、歯根膜幅については、100ミクロン程度の厚みしかないため、実際に用いる三次元の要素としては、20ミクロンー50ミクロン程度のものを最低限考慮する必要があることがあらためて示唆された。有限要素解析に当たっては、歯根膜の物性定数の問題が依然として残っている。これについては、われわれが有しているヤング率を当てはめることとしたが、ボアソン比については、さらなる検討が必要である。この点については、世界的にもまだ未解決の問題では有る。
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