FGF受容体(FGFR)には1~4型の4種類のホモログが存在し、選択的スプライシングによる数多くのアイソフォームが同定されている。Fgfr遺伝子の突然変異が、ヒトでは軟骨無形成症やクルーゾン症候群、アペール症候群、ジャクソン・ワイス症候群など、頭蓋骨間の縫合の早期癒合を引き起こすことから、FGFRは軟骨形成、頭蓋顔面の骨格形成において重要な役割を果たしていると考えられている。胎生期の顔面領域では、これらのFgfr遺伝子が時間的・空間的に特徴的な発現パターンを示すことが知られており、個々のFGF受容体とリガンドであるFGFとがそれぞれに特徴的な空間的発現パターンを有することでFGFシグナル伝達系が領域特異的な組織分化の制御に貢献し、顎顔面骨格のかたちや大きさの決定に重要な役割を果たしているものと考えられる。本研究では、FGF受容体による胎生期下顎の三次元的パターン形成のメカニズムの解明を目的として、ラット下顎器官培養系とRNA干渉により、Fgfr遺伝子発現をノックダウンし、骨格組織の形態形成のメカニズムを解明することを目的とした。LacZ発現ベクターとLacZのshRNAベクターを遺伝子導入することにより、shRNAによるノックダウンの確認をおこなった。さらに、RNA干渉に用いるための種々のshRNA用ベクターの構築を行い、器官培養を行った下顎隆起に対してshRNAベクターを導入した。その結果、メッケル軟骨の形態に変化が認められた。この結果より、FGF受容体は下顎隆起におけるメッケル軟骨の形態形成において、重要な役割を果たしていることが示唆された。
|