研究概要 |
歯周組織再生を期待して広く用いられているエムドゲインはその効果が認められているものの、作用機序が依然として不明である。エムドゲインの主成分であるアメロジェニンはマラッセの上皮遺残にも発現しており、アメロジェニンの役割を解明することは、矯正治療における病的歯根吸収のメカニズム解明や、新規歯周病治療薬開発など歯科臨床に貢献する有益な情報につながると考えられる。 卵巣摘出時(OVX)などのエストロゲン量の変化はIL-6の産生を増加し結果的にRANKLの発現を増加すること、骨芽細胞の一酸化窒素(NO)の産生量を変化させ骨量に影響を与えることが過去の研究から判っており、OVX時のアメロジェニン過剰発現トランスジェニックマウスの表現型から、アメロジェニンはこれらのシグナル経路を変化させている可能性がある。 本年度は、「アメロジェニンはNOの発現を上昇させることで、エストロゲン低下時のNO産性低下を補い、骨密度低下を防止する。」という仮説を、アメロジェニンTGマウス由来骨髄間葉系細胞の培養を通じて検証した。すなわち、TGマウスと野生型マウスに卵巣摘出術を施し、8週後に長管骨より骨髄間葉系細胞を採取し、短期間培養後NO合成酵素(eNOS,iNOS)の遺伝子発現量の変化をリアルタイムPCR法で測定した。結果、アメロジェニンアイソフォームのうちLRAPを発現するトランスジェニックマウスでは、野生型と比較してOVXを行った時のeNOS、tNOSの発現量が有意に低下していることが確認された。現在NOの産生量変化をELISAで確認すると共に、NO産生の変化のメカニズムを検索中である。本研究の結果から、アメロジェニンによる骨代謝変化の証拠およびメカニズムを掴めればよいと考えている。
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