研究課題
ダウン症の本邦での発生頻度は、1000人に1人でありヒト先天性形態異常の中でも極めて高い。これまで報告されているダウン症患児の口腔内環境は、上顎の劣成長、叢生、開咬、相対的な巨舌症、耳下腺唾液量の減少による自浄作用の低下、唾液の緩衝能異常、唾液pHが高いため歯周病原性細菌(A.actinomycetemcomitans, P.gingivalisなど)が早期に口腔内へ定着しやすくなるとされている。また、早期老化に伴う歯周組織の脆弱化、多形核白血球、単球およびリンパ球の機能低下が報告されている。したがって、臨床的にダウン症患児は、齲蝕の感受性が低い反面、歯周疾患に罹患しやすいとされてきた。そこで本研究では、インフォームドコンセントの得られた九州大学病院小児歯科外来受診ダウン症患児10名(2歳~29歳)の口腔内診査および齲蝕リスク検査を行った。その結果、下顎乳前歯の先天欠如や上顎側切歯の矮小化が高頻度に認められた。口腔清掃状態は患児すべてが不良であり、そのうち9名は明らかな歯肉炎を呈していた。齲蝕経験歯数や歯石沈着量について、一貫性は認められなかった。また、齲蝕リスク検査では、同患児の唾液およびプラーク中のS.mutansレベルは全員が高いわけではなかった。一方、同患児の唾液pH・電解質分析をEX-Ca分析装置(常光社製)により行ったところ、健常児との比較ではNa値とCa値がやや高い傾向となった。これは特異的な口腔内環境との関連が考えられるが、今後さらに多くの検体による解析を必要とする。さらに採取した同患児の唾液中のアディポネクチンレベルおよび他のアディポサイトカインレベルを測定することにより、ダウン症患児の口腔疾患予防の指標となるかどうかについて検討を加える。
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