【目的】矯正治療では予期せぬ歯根吸収のコントロールが重要であるにもかかわらず、その機構は解明されていない。矯正治療患者を対象とした疫学調査において、矯正的歯の移動時における歯根吸収を生じる危険因子の一つにアレルギー疾患の関与が示唆された。これらの関連性を明らかにするため、アレルギー状態における歯の移動時の局所的な炎症性サイトカインの動態並びに、Aspirinによる抑制効果をこれまで報告してきた。本年は、その機構に、炎症性の局所メディエーターであり、近年免疫制御因子として注目されているロイコトリエン(LT)および関連分子が関与する可能性について検討した。 【方法】6週齢のBNラットにOVAを腹腔内投与し、アレルギー疾患モデルを作成した。14日後、上顎第一臼歯(M1)にcoil springを装着し、24時間後、M1周囲歯槽骨を採取した。また、RT-PCRにて抽出物中のLTおよび関連分子についてmRNA発現量を解析し、OVA非感作群、coil spring非装着群と比較した。 【結果および考察】装置装着24時間後、OVA感作群は有意にIL-1β、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生量は増加していた。さらに、装置装着群は非装着群と比較して、LTおよび関連分子のmRNA発現量が有意に増加し、特にアレルギー疾患モデルで顕著な増加が見られた。アレルギー疾患モデルにおける実験的歯の移動初期において、LTおよび関連分子の局所的な発現亢進が明らかとなり、歯根吸収亢進との関連性が示唆された。
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