研究概要 |
[目的]:フッ化ジアミンシリケート溶液を人工脱灰乳歯(抜去健全乳歯)に塗布し、変色の有無と塗布面の組織変化を観察した。 [方法]:〈着色の有無〉:乳前歯に象牙質に及ぶ窩洞を形成した。10% EDTA(pH=7.2)で90秒と35%正燐酸ゲルで60秒脱灰後に0.476mol/lフッ化ジアミンシリケート溶液(SiF)もしくは38%フッ化ジアンミン銀溶液(AgF)中に60秒浸漬した。〈塗布面の組織変化〉:乳臼歯もしくは乳犬歯の頬(唇)舌面あるいは咬合面を平坦に切削研磨し、辺縁にエナメル質を残して象牙質を露出させた。0.476mol/l SiF塗布の有無と人工唾液浸漬の有無により4群を設けた。SiF群では、脱灰後に綿球でSiFを3分間すり込むように塗布した。人工唾液群では、人工唾液(10ml,37℃)中に7日間浸漬した。人工唾液は24時間ごとに交換し、48時間ごとにSiFを塗布した。試料を半切し、走査電子顕微鏡(SEM)観察と塗布表面から5μm間隔に15μm下方までの歯に対するSEM/ED分析を行った。 [結果]:〈着色の有無〉:脱灰・AgFの歯は褐色に変色したが、脱灰・SiFでは肉眼的な変色は認められなかった。〈塗布面の組織変化〉:SEM観療;1)人工唾液浸漬の有無にかかわらず、SiF塗布エナメル質面は多量の球状粒子を含むゲル状の膜で覆われていた。SiF塗布象牙質では、脱灰により開口した象牙細管の多くが球状の粒子により封鎖されていた。SEM/ED分析;F,P,Ca,S,M,Ca/PのED分析結果;1).人工唾液浸漬の有無と塗布面からの距離にかかわらず、象牙質のCa,O,Mg並びにエナメル質のCaは、SiF塗布群が非塗布群よりも有意に高かった。2).SiF塗布群について、塗布面が10μm下方より有意に高かったのは、象牙質では人工唾液無し群のF,SiとCa/P並びに人工唾液群のOであった。 [考察]:脱灰歯質に対するSiF塗布は、歯を変色させずに齲蝕の抑制と再石灰化を促す可能性が示唆された。細菌感染により脱灰された歯質に対する効果と唾液や水分の影響についてさらなる観察が必要である
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