研究概要 |
Retinoic acid(RA)はビタミンA代謝物で、胎生期組織の位置決定と発育をコントロールするが、過剰投与により口唇裂口蓋裂を発症することが知られている。今年度は、上顎突起におけるL3/Lhx8遺伝子発現とRA投与による影響についてchick embryoを用いて検討した。 上顎突起と前頭鼻突起が癒合する前(Stage 20HH)のchick embryoの上顎突起に、各種の因子を浸潤させたbeadsを埋入した。6,24時間後にembryoを摘出し、L3/Lhx8プローブを用いてin situ hybridizationを行った。またStage38まで発育させたembryoにAlcian BlueとAlizarin Red染色を行って、顎顔面骨格および骨形成を観察した。 上顎突起にRAあるいはCitral(RA合成阻害剤)を投与すると、どちらもbeads周辺のL3/Lhx8発現が減少し上顎の劣成長と唇裂を発症した。RA、Citral投与群は、ともに上顎突起由来の骨(上顎骨、頬骨弓)の欠損もしくは形成不全を生じた。また、FGF-8bを投与するとbeads周辺にL3/Lhx8発現が増加し、SU5402(FGF inhibitor)を投与するとL3/Lhx8発現は有意に減少し、唇裂を発症した。 L3/Lhx8遺伝子は、上顎の形成に関与し、RAやFGFを介した経路により発現制御されていることが示唆された。
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