前年度に引き続き各種制御因子によるLhx8遺伝子の機能阻害あるいは促進効果を調べた。作用させる因子は(1)all-trans-Retinoic acid(RA)、(2)Citral(RA inhibitor)、(3)Fgf-8b、(3)SU5402(Fgf receptor antagonist)である。 これらの因子をBeadsに浸漬させ、Beadsを実体顕微鏡下で、Stage20 chick embryoの上顎突起に埋入した。埋入6時間後にembryoの上顎突起を摘出後、cDNAを抽出し、real-time RT-PCRおよび電気泳動を行って、Lhx8遺伝子の定量解析を行った。 その結果、RAとCitralを作用させた上顎突起ではControl(DMSO)に比べ有意にLhx8発現量が減少した。一方、上皮由来の成長因子Fgf-8bを作用させると上顎突起でのLhx8発現量は有意に増加したが、Fgf拮抗剤SU5402を作用させると有意に減少した。なお、Beads埋入操作および上記因子による器械的な細胞障害の有無を調べるため、Nile Blue sulfhte染色、およびLyso Tracker Red(LTR)染色を行った。Beads周囲に明らかな細胞死は観察されず、Lhx8遺伝子発現の減少は、上記因子のシグナル阻害によるものと考えられた。 以上の結果、上顎突起のLhx8発現は、RAもしくはFGFシグナルによってコントロールされていることが明らかになった。また、RAの至適局所濃度によってLhx8の発現が制御されていることが示唆された。
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