本研究の目的はメカニカルストレスによる骨の再構築(リモデリング)のメカニズムを、マウスの歯牙に負荷をかけることによって解明しようとするものである。歯槽骨のリモデリングは比較的短期間で生じ、またマウスを使用することにより遺伝子レベルでの解析が可能であると考えた。モデルとしてマウス上顎の器官培養を用い、その第一大臼歯に負荷をかけるが、本研究第2年度である平成22年度には、開発した器具での実験条件の確立を目指した。 昨年までに開発した器具によりマウスの上顎を器官培養に付すこと、そして第一大臼歯にコイルスプリングにて負荷をかける事は可能であった。コイルスプリングとボルトによる加重量の微調整はなかなか困難であったが、ボルトの改良である程度改善できた。またスプリングにニッケル-チタン合金を使用することにより、より微小な一定量の荷重をかけることが可能になった。 昨年度実際に歯牙が移動するだけの期間、上顎の器官培養をすることは不可能であることが判明し、負荷をかけたことによって早期におこる組織および歯根膜細胞の変化を引き続き観察した。歯根膜線維芽細胞におけるI型コラーゲンの発現は早期より圧迫側で減少することがわかったが、このほかエストロジェン受容体の発現にも圧迫側と牽引側で差異があることがわかった。この事はエストロジェンと骨粗霧症発現の関連を考えると、骨の再構築のメカニズムを考える上で極めて興味深いことと考える。
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