本研究の目的はメカニカルストレスによる骨の再構築(リモデリング)のメカニズムを、マウスの歯牙に負荷をかけることによって解明しようとするものである。歯槽骨のリモデリングは比較的短期間で生じ、またマウスを使用することにより遺伝子レベルでの解析が可能であると考えた。 方法はマウス上顎の器官培養を用い、その第一大臼歯に負荷をかけることによる変化を観察することによった。昨年までに開発した器具によりマウスの上顎を器官培養に付すこと、そして第一大臼歯にコイルスプリングにて負荷をかける事は可能であったが、コイルスプリングとボルトによる加重量:の微調整はなかなか困難であった。しかしボルトの改良である程度改善できた。またスプリングにニッケル-チタン合金を使用することにより、より微小な一定量の荷重をかけることが可能になった。 昨年度までで実際に歯牙が移動するだけの期間、上顎の器官培養をすることは不可能であることが判明し、負荷をかけたことによって.早期におこる組織および歯根膜細胞の変化を引き続き観察した。歯根膜線維芽細胞におけるI型コラーゲンの発現は早期より圧迫側で減少することがわかった。またエストロジェン受容体の発現にも圧迫側と牽引側で早期から差異があることがわかった。この事は閉経期の女性に高頻度で骨粗鬆症の発症をみることとの関連を考えると、骨の再構築のメカニズムを考える上で極めて興味深いことと考える。
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