研究概要 |
「研究の目的」カルシウム拮抗薬による重度薬剤性歯肉増殖症線維化組織中において、Collagen代謝に重要な遺伝子発現およびタンパク質局在を調査することにより、歯肉線維化病変部における強調された肉芽組織反応の分子機構を解明する。具体的には、ヒト歯肉増殖症歯肉と健常者歯肉でのコラゲナーゼインヒビターTIMP--3,-4の遺伝子発現を定量RT-PCR法にて解析し、発現量を比較検討すると共にタンパク質発現を免疫組織学的手法を用いて解析し、発現組織局在・発現細胞を同定、健常者と比較する。更に、発展として線維化歯肉及び歯周炎歯肉における遺伝子発現の特徴をマイクロアレイとデータマイニングの手法を用いて解析する。 「研究実施計画」本研究は、新潟大学歯学部倫理委員会において承認された計画である。インフォームドコンセントの得られた歯周炎併発歯肉増殖症患者10人とコントロールとして歯周炎患者及び非歯周炎患者各10名の歯肉組織を対象として、定量RT-PCR及び免疫組織学的解析を行った。成果は「TIMP-3,TIMP-4の歯肉増殖症、歯周炎罹患歯肉組織中における遺伝子発現レベルおよび免疫組織化学的局在」と題し第1報として歯科基礎分野の国際誌であるArchs Oral Biology(2009)に報告した。本研究を含む一連の研究成果について2009年度日本歯科保存学会学会学術賞を授与された(Review2010)。第1報から得られた結果から「真に薬剤性歯肉増殖症に特異的な遺伝子発現」を突き止めるべく、継続・発展させたマイクロアレイとデータマイニング遺伝子発現解析を行い、歯肉増殖症と歯周炎の特異的遺伝子発現パターンについて第2報、第3報をArchs Oral Biology(2011),J Periodont Res(2011)に報告した。その結果、歯肉増殖症線維化には個人レベルで特徴が異なることが解明され、バックグラウンドにある歯周炎には特徴的生物学的pathwaysが関与していることを明らかにした。現在、新規発病関連遺伝子グループに着目し本研究課題を発展させるべくさらなる成果を目指している。
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