研究概要 |
歯周病と動脈効果の関連が指摘されているが、その詳細なメカニズムは不明なままである。歯周病で認められる現象の中でも、炎症性の骨吸収がアテローム性動脈硬化の促進に関連しているのではないかと考え研究を計画した。今年度は以下の研究を行いそれぞれ記載した結果を得ることができた。 1, 動脈硬化で見られるT細胞は主にIFNgを産生するTh1であると言われている。また炎症性骨吸収部位では多くのIFNgや破骨細胞分化因子であるRANKLの産生が確認されていることより、foam cell形成におけるRANKLとIFNgの影響を検討した。その結果、IFNgはマクロファージにおけるoxLDLの取り込みを有意に抑制した。しかしRANKLはIFNgによるoxLDLの取り込みの抑制を減少させた。 2, ApoE KOマウス歯肉へのLPS注入による骨吸収がアテローム性動脈効果へ与える影響 (ア) ApoE KOマウス歯肉にE.coli LPSを13回注入して歯槽骨の吸収を惹起させた。このマウスと未処置あるいは背部皮下へLPSを注入した対照群と比較することで炎症性骨吸収の動脈硬化への影響をin vivoで検討した。評価法として大動脈弁部位を組織学的に評価した。その結果、実験群では対照群と比較して広範囲にわたるアテロームの形成が確認できた。また予備実験により、アテローム組織において免疫染色によりRANKL陽性細胞が検出できた (イ) 上記3群のマウス脾細胞がfoam cell形成に与える影響を検討した。その結果、実験群では対照群と比較して有意にfoam cell形成の増加が確認できた。 以上より、LPSによる炎症性骨吸収はアテローム性動脈硬化の形成を促進することが示唆された。またこの促進にはRANKLの関与が考えられた。これらの結果は二つの学会において報告した。今後はさらに詳細なメカニズムを検討していく予定である。
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