歯周病によるアテローム性動脈硬化促進の関連を検討するために、これまで炎症性骨吸収メカニズムを検討してきた。その結果、動脈硬化組織で多く棟出される炎症性サイトカインIFN-γやCD40Lが炎症性歯槽骨吸収促進に関連することを示してきた。さらに破骨細胞形成において必須であるRANKLがマウスアテローム性動脈硬化組織において発現されることを示した。 これらの研究では炎症性骨吸収惹起にLPSを用いてきたが、口腔内感染ではグラム陽性細菌の影響も大きい。 今年度はこのグラム陽性細菌の重要な構成因子であるペプチドグリカンの骨吸収に与える影響を検討した。その結果、LPS同様にペプチドグリカンもRANKL存在下で破骨細胞形成ならびに骨吸収を促進することが確認できた。さらに、ペプチドグリカンがLPSと協調して破骨細胞形成を促進することも確認した。 またLPSならびにペプチドグリカンによる骨吸収にはどちらもRANKLとTNF-αが重要な役割を果たしていることが示唆された。これらの所見はJ Periodontal Resに投稿し、アクセプトされている。 TNF-αはアテローム性動脈硬化でみられる泡沫化細胞の形成を促進することが既に報告されている。 我々はRANKLが泡沫化細胞形成を促進することを学会報告しており、歯周炎における炎症性骨吸収がアテローム性動脈硬化を促進するに関連する可能性を示すことができた。
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