研究概要 |
Wister系ラット(雄、4週齢)の歯肉に、カルボキシメチルセルロースに混和したPorphyromonas gingivalis(P. gingivalis)を塗布し、実験的歯周炎を惹起した。実験群では、TNF-α変換酵素(TNF-α converting enzyme : TACE)阻害剤の局所投与を行い、P.gingialis塗布のみのポジティブコントロール群、TACE阻害剤投与のみまたは未投与のネガティブコントロール群と比較した。P.gingivalis接種の6週間後に、麻酔薬過剰投与にて屠殺を行い、歯周状態の観察後、頭蓋骨を2気圧下で10分間加熱後3%次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸漬して軟組織を除去し,1%メチレンブルー溶液で歯槽骨を染色乾燥させた。これらの試料の上顎臼歯部のセメントエナメル境から歯槽骨頂までの距離を測定して、6匹分の平均値を歯槽骨の吸収量とした。計測は3人の験者が盲検的に行った。実験群の骨吸収量は、ポジティブコントロール群と比べ有意に小さく、ネガティブコントロール群との差はみられなかった。これまで、ヒト歯周組織におけるTACEの局在が確認され、またラット歯周病モデルにおいてTACE阻害剤による骨吸収の抑制が明らかにされ、TACE阻害剤の有効性が示唆された。今後さらなる検証を行い、TACE阻害剤の臨床応用への可能性を検索し、歯周病発症抑制のメカニズムを解明していく予定である。
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