これまでの研究を継続して、「抗酸化療法」によって口腔内感染症の予防および治療薬を開発する可能性を探っている。歯周治療において抗菌療法に加えて生体応答を制御することを目指して抗酸化剤やビタミン類の効果が検討されている。ボスウェリン酸は、抗炎症および抗酸化作用を有し、古くから変形性関節炎、高脂血症および気管支喘息の治療に用いられてきた。 最近では、慢性関節リウマチに対する効果も報告されている。 口腔内の好中球機能には、口腔内で産生される活性酸素が影響を及ぼすと考えられるため、抗酸化剤(ボスウェリアセラータ他)とマルチビタミンを含有した錠剤を健常者と歯周病患者に30日間経口投与させて口腔内唾液中の活性酸素の変動をESR法で測定し、抗酸化剤の全身投与による口腔内の活性酸素量に及ぼす効果を解析している。学内の倫理委員会の承認を受け、現在までに、プラシボを用いた2重盲見法で選択した40名の被験者数に対して臨床研究を行って、被験者の唾液量、pH、活性酸素およびストレスマーカーであるコルチゾール値の変動を調べた。試験群はプラシボ群に比較して、唾液中のpHは増加する傾向を示したが、統計学的有意差はなかった。活性酸素量の変動は有意ではなかった。一方、コルチゾール値は有意に低下したため、使用した錠剤には抗ストレス作用がある可能性が示唆された。コルチゾール値を低下させるために有効な成分を特定したいと考えて研究計画を立案している。
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