研究概要 |
破骨細胞が担う骨吸収過程において,破骨細胞前駆細胞の遊走とRANKLによる成熟した破骨細胞への分化が必須である。しかし、破骨細胞前駆細胞が骨吸収の場に供給されるメカニズムは未だ不明な点が多い。我々は骨吸収の場に遊走されてくる破骨細胞前駆細胞にはある種のケモカインレセプター発現パターンがあり、その発現パターンによって骨芽細胞周囲へのホーミングが制御されている、という仮説を立て研究を行って来た。 マウス骨髄間質由来細胞株のST2細胞をIL-1、VitaminD3で刺激し、ケモカインの遺伝子発現を検討すると、CCL7、およびCCL25遺伝子発現の上昇が認められた。また、マウスマクロファージ由来細胞株のRAW264.7細胞をRANKLで刺激すると、CCL7の受容体であるCCR1、CCR2、並びにCCL25の受容体であるCCR9遺伝子の発現が認められた。CCL7抗体、CCL25抗体はそれぞれRANKLが誘導する破骨細胞の数を有意に減少し、CCL7、CCL25リコンビナント蛋白はRANKLが誘導する破骨細胞形成を有意に増加した。さらにRANKLで前処理されたRAW264.7細胞は、CCL7に対し有意な走化性能を示した事から、CCL7が破骨細胞形成に重要なケモカインと考えられた。また、RANKLによって誘導される破骨細胞形成関連遺伝子の中で、CCL7によって、RANK、NFATc1の遺伝子発現が有意に増強した。このメカニズムを解明するため転写因子の活性化を検討したところ、NF-kBとNFATの転写活性はCCL7処理により有意に増加したこれらの結果から、特にCCL7-CCR1あるいはCCR2、さらにNF-kBとNFATへ伝わるシグナル伝達経路が破骨細胞形成に強く関与していることが示唆され、CCR1やCCR2を発現している破骨細胞前駆細胞が骨吸収の場へホーミングする可能性が示唆された。
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