研究概要 |
本研究の目的は、歯周病病変の初期に破壊の進む上皮性付着機構に着目し、それを担う接合上皮細胞の遺伝子発現の網羅的解析、特異的マーカーの検索を通して上皮付着のメカニズムを分子レベルで理解することである。これまで特異的マーカーも株化細胞も樹立されていなかったが、レーザーマイクロダイセクション法を応用することで克服する。 5週齢までのJc1:ICRマウス頭部を凍結薄切(前頭断)の後、接合上皮部分に含まれる細胞群をレーザーダイセクション法によって分離する手法を確立した。凍結切片においても樹脂包埋と同様に硬組織と軟組織の連続性を保った状態で切片を作成することが可能となった。標的組織である接合上皮・口腔上皮のみをレーザーマイクロダイセクション(ML)を用いて回収し、RNA抽出を行った。MLを用いて回収した接合上皮、口腔上皮のRNAサンプルにおいて18S,28SrRNAのピークが明瞭に検出され、低分子量の分解産物は微量であった。さらに、分離した細胞群より全RNAを抽出し、マイクロアレイによる発現遺伝子の網羅的解析に成功した。接合上皮においてCDK (p21,p15)、actin、α-cateninの発現が接合上皮で上昇していることが確認された。さらに抗好中球エラスターゼ作用を持つと知られている分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(slpi)についても発現量の増加が認められた。接合上皮においてslpiの発現は口腔上皮に比べ約1000倍高い。口腔上皮に比較しで接合上皮に特異的な発現動態を示す遺伝子についてreal time PCR法による発現の定量的解析を行ったところ、接合上皮においてSlpiの発現は口腔上皮に比べ約1000倍高いことが明らかとなった。また、6週齢の切片上で、免疫染色を行い陽性を確認している。 バックグランドの発色が高いために、より正確な陽性部位の局在を明らかにするように継続している。
|