研究概要 |
歯周炎による歯周組織の破壊をin vitroでシミュレートするために,三次元培養法を用いて上皮と間葉との相互作用を調べる歯周炎の病態形成モデルを作製した。コラーゲンゲル内にヒト歯肉線維芽細胞(GF)を播種し,6穴プレート内で硬化させた後,ヒト歯肉上皮細胞(GE)を播種した。24時間後にゲルをプレートの底から浮かせ(floating culture)さらに5日間培養を継続した後,残存コラーゲン量を測定した。歯周炎罹患部位からのGFには,コラーゲンゲルの分解を極度に促進する"悪玉"線維芽細胞が含まれていた。また,歯周炎分子標的治療薬のスクリーニングのために,各種阻害剤を用いて,ゲル分解に及ぼす影響を調べた。MMP阻害剤,セリンプロテアーゼ阻害剤,TGFβRI阻害剤,JAK阻害剤または放線菌産物を加えておくと,コラーゲンゲルの分解が顕著に抑制されたが,これらの阻害剤は全身投与が難しい薬剤であるため,より安全な薬剤を模索した。その結果,狭心症の治療薬として長年使用されてきた「トラピジル」がコラーゲンゲルの分解を顕著に抑制することを見出した(「歯周炎治療薬」として特許出願済)。このゲル分解抑制の分子メカニズムは依然として不明であるため,"悪玉"および"善玉"線維芽細胞のクローニングを開始した。クローニング後に両細胞の遺伝子発現プロファイルを比較することにより,「トラピジル」の標的タンパクを同定できると考えている。また,天然物に由来する歯周炎に有効な分子標的治療薬のスクリーニングも行っている(特許出願準備中)。
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