研究課題/領域番号 |
21592637
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
大島 光宏 奥羽大学, 薬学部, 教授 (30194145)
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研究分担者 |
山口 洋子 日本大学, 歯学部, 助手 (00239922)
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キーワード | 生体外歯周炎モデル / 三次元培養 / コラーゲン分解阻害 / 歯周炎原因遺伝子 / 分子標的治療薬 |
研究概要 |
適切な動物実験モデルが作製不可能な歯周炎に関して、ヒトの初代培養細胞を用い、世界で初めて「生体外歯周炎モデル」を確立した。このモデルを用いてスクリーニングを行い、重度歯周炎罹患者の歯肉から"悪玉"線維芽細胞を分離し、GeneChipシステム(日本大学松戸歯学部・安孫子教授)を用いた解析で、悪玉歯肉線維芽細胞に高発現している歯周炎原因候補遺伝子を22個まで絞り込んだ(4ペア)。その後のreal-timePCRで、原因候補遺伝子を2個にまで絞ることができた。このうちの一つはチロシンキナーゼ受容体をコードする遺伝子であったため、低分子キナーゼ阻害剤の効果を試したところ、コラーゲンゲルの分解は顕著に抑制された。さらに、東大呼吸器内科との共同研究で、レンチウイルスベクターによって悪玉線維芽細胞に2種類のmiRNAを導入するRNAiを行って、その効果を検討したところ、コラーゲンゲルの分解は有意に抑制され、これらの遺伝子が歯周炎原因候補遺伝子である可能性が高くなった(1件は特許申請済み)。これにより、世界初となる歯周炎分子標的治療薬の候補が誕生する。また、歯周病ゴードン会議における発表で、フォーサイス研究所教授の河井教授がたいへん興味を持ってくださり、共同研究を行う運びとなった。また、侵襲性歯周炎歯肉由来の悪玉線維芽細胞を用いて、GeneChipシステムを用いた生体外(侵襲性)歯周炎モデル3ペアの解析を行った。その結果、侵襲性歯周炎の"悪玉"歯肉線維芽細胞に共通して高発現(>1.5)している歯周炎原因候補遺伝子は、予想に反してわずか7遺伝子であった。逆に低発現(<0.7)のものが17遺伝子あり、侵襲性歯周炎は成人性歯周炎とは明らかに異なる遺伝子発現によって引き起こされる、異なった病気であるという可能性を示唆することができた。3月にはカロリンスカ研究所、ウプサラ大学、シャリテ、フリードリッヒ・シラー大学にてがんと歯周炎との類似性に関するディスカッションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
歯周炎原因候補遺伝子のリストアップがスムーズに進展し、これに興味を持ったフォーサイス研究所の河井教授が動物実験を行ってくれることになった。さらに、東大呼吸器内科の先生もたいへん興味を持ってくださり、miRNAによるRNA干渉の実験を申し出てくれた。とくにmiRNAの実験は、原因候補遺伝子の作用を直接抑えることができるため、決定的な証拠となる。この実験によって特許申請が可能となり、さらに分子標的治療薬の候補を挙げることができた。ただ、論文執筆には症例数が不足しているため、できるだけ多くの症例データを早く蓄積したい。
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今後の研究の推進方策 |
成人性歯周炎と侵襲性歯周炎での遺伝子発現が大きく異なったという結果から、成人性歯周炎の原因候補遺伝手がそのまま侵襲性歯周炎の原因候補遺伝子とはならない可能性が大きいことがわかった。次年度は、侵襲性歯周炎原因候補遺伝子の究明と、線維芽細胞ばかりでなく、歯周炎罹患歯肉上皮に特異的な遺伝子を見つけたいと考えている。また、フォーサイス研究所での動物実験結果の報告を待って、歯周炎原因究明のための研究を加速させたい。さらに、歯周炎分子標的治療薬の候補が挙がったことから、技術移転先企業も探していきたい。
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