研究概要 |
平成21年度は以下の結果を得ることができた 実験動物はWistar系ラット6週齢を用いて上顎右側第二臼歯歯頸部周囲にナイロン糸を結紮し,実験的歯周炎惹起させた.惹起後14日目,28日目,42日目の歯槽骨吸収像をμCTにて結紮群と非結紮群を比較したところ、結紮群では非結紮群に比べ14日目に明らかな歯槽骨吸収を観察することができた.そこで連続切片を作成しHE染色し形態計測したところ,結紮群ではセメントエナメル境から歯槽骨頂間距離が増加しており,結紮によって歯槽骨が吸収された.しかし,炎症所見としての細胞間隙の拡大,結合組織線維の走行の不整などは観察できなかった. 次に結紮周囲歯肉をホモジナイズサンプルとし、サンプル中のIL-1α, IL-1β, IL-1 receptor antagonist(IL-1Ra), Type II IL-1 receptor(IL-1R II)産生量をELISA法にて測定したところ,IL-1αは28日目でピークを迎えその後下がる傾向が見られ,IL-1βは42日目でしか(11pg/mL)測定することができなかった。一方、抗炎症性サイトカインであるIL-1R IIは28日目でピークを迎えその後下がる傾向が見られるのに対して,IL-1raは14日目,42日目と比較して28日目で減少する傾向が見られた.以上のことからラットにおける実験的歯周炎モデルにおいて、歯槽骨吸収は顕著に誘発することができるもののあきらかな炎症像が確認できなかったことはIL-1に比ベインヒビターと考えられるIL-1R II、やIL-1Raが歯周組織中で恒常的に産生されていることが関与している可能性が示唆された。 そこで現在IL-1Ra KOマウスから腹腔マクロファージを採取し、LPS刺激に対する反応性をタンパクおよび遺伝子レベルで測定するのとともに、破骨細胞形成能に関して検討を加えている。
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