研究概要 |
平成20年に労働安全衛生法の特定化学物質障害予防規則が改正され,ホルムアルデヒドに関して一層厳しい管理が要求されている。歯科臨床では,根管貼薬治療等に使用される根管消毒剤にホルムアルデヒド合剤があり,法規制の変更に伴う対応方法の検討が急務である。労働安全衛生の管理で重要な「作業管理」,「作業環境管理」,「健康管理」の3管理の中で,本研究では,「作業管理」および「作業環境管理」という観点から,ホルムアルデヒド合剤による環境汚染に対する臨床的に即効性のある具体的な提言をまとめあげることが研究目的である。 平成22年度は,夏季と冬季に総合病院の歯科外来診療部門および歯科クリニックで,ホルムアルデヒド合剤による環境汚染の現状調査を複数日に実施し,状況を把握してきた。調査方法は,国内の有害物質作業場所環境評価に規定されている作業環境測定基準に基づいて,空気中のホルムアルデヒド蒸気を,アクティブガスサンプラーで10分間(合計2リットル)捕集してHPLC分析をする手法を用いた。その結果,空気中のホルムアルデヒド濃度は許容濃度を下回ることが確認された。また,いずれもホルムアルデヒド合剤の使用に伴う濃度の日間変動があること,全体的に冬季よりも夏季の方が全体的な濃度が高いことがわかった。 これらの現状調査結果をまとめ,第20回日本産業衛生学会 産業医・産業看護全国協議会および第3回口腔インターフェイス健康科学シンポジウムで発表した。 診療室の現状調査は,上記の作業環境測定基準に基づくアクティブサンプラー(積極的な短時間吸引)で結果をまとめる一方で,厚生労働省指針に基づく室内空気を数時間から数日間にわたって吸引するパッシブサンプラー(静置しての長時間吸引)の検討を始め,次年度の研究の足がかりとした。
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