研究課題
1.歯科心身症診断基準の検討と試案の修正作業歯科心身症の症候学的な診断基準の妥当性を実際の症例に当てはめて検討したところ、酷似した"舌痛"や"歯痛"といった症状が前景に立っていても、基盤にうつ病などの精神障害が潜在すると治療の反応性が大きく異なってくることが明らかになってきた。症例報告として統合失調症あるいは認知症が合併していた口腔内慢性疼痛を日歯心身誌に投稿、掲載された。このような症候学による診断の有用性と限界を症例報告も併せて第26回日本歯科歯科心身医学会やThe 21st World Congress on Psychosomatic Medicineにて発表した。これらの結果を踏まえPsychiatry In Primary Careに準じたPsychiatry In Dental Care(PIDC)という概念の導入が有効である可能性を追究している。2.治療アルゴリズム構築の試み特に歯科インプラント治療後に発症した歯科心身症の治療成績や長期予後を検討し、SSRIやSNRIに加え、NaSSAやDPAなどの新規向精神薬の有効性を明らかにした。またインプラントの除去などの歯科処置が予後を悪化させることを報告した。NaSSAが有効であったインプラント術後の非定型歯痛の症例報告が日歯心身誌に掲載された。またSNRIであるMilnacipranの舌痛症への用量反応性を明らかにし、論文がClin Neuropharmacol誌に掲載された。3.脳機能画像研究による「歯科心身症」の高次中枢性病態の解明口腔内セネストパチー患者を中心にSingle Photon Emission Computed Tomography(SPECT)データを蓄積し、本症特有の脳血流パターンや責任病巣の同定、あるいは患者ごとの脳の活動パターンの個別性の解明を試みた。本症患者には特異的な側頭葉の血流増加の左右差が示唆され、咬合異常感の患者と酷似した血流パターンである可能性が示唆されてきた。JECTに症例報告が掲載され、症例数を増やし、日本心身医学会などに報告し、さらに詳細な検討を加えている。
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