研究概要 |
本研究は1998年から2008年にかけて実施した厚生労働科学研究「口腔と全身の健康」に関する10年にとわたるコホート研究終了後のフォローアップ研究であり,血清ミクロ栄養素と下顎皮質骨密度との関係を評価することに加え,パノラマエックス線写真評価による下顎骨下縁皮質骨の骨密度低下に及ぼす血清栄養素,ビタミン,ミネラルの影響を調べ,高齢者の骨密度低下に対するリスク因子を特定することを目的に解析を進めた。解析対象者148名(77歳)について,骨代謝マーカーである尿中deoxypyridinoline,血清オステオカルシン,骨特異的アルカリフォスファターゼは臨床的アッタチメントロスと下顎骨下縁皮質骨の骨密度低下(MIC)に対して有意な影響を与えた。また,有歯顎者でかつ非喫煙者234名についての重回帰分析の結果、血清総コレステロールはPD4mm以上,AL4mm以上,BOPの部位率に対し有意な関連を示し,高齢者ではコレステロールが低い方が歯周破壊を進行させやすいことを示唆した。加えて,栄養摂取と齲蝕・歯周病との関連を経年観察した結果,牛乳や乳製品の摂取量と性の2つの要因は6年間の根面齲蝕発生に関連(抑制的に)しており,また,緑黄色野菜は抑制的に,炭水化物,飲酒,残存歯数は歯周病進行へ働いていた。なお,訪問調査による心疾患や脳血管疾患あるいは骨粗鬆症などの発生状况の聞き取り,および,死亡調査を実施したが,これら重篤な疾患や死亡数はまだ解析に耐えうる数に達していないことから,次年度以降の調査データの蓄積を待つこととしたい。
|