研究概要 |
本研究は1998年から2008年にかけて実施した厚生労働科学研究「口腔と全身の健康」に関する10年にわたるコホート研究終了後のフォローアップ調査を実施し,蓄積データの解析を推進した結果,パノラマエックス線写真評価による下顎骨下縁皮質骨の形態とスティッフネスによる踵骨密度との間には男女とも有意な相関があり,下顎骨下縁皮質骨の形態分類(MIC分類)は性,BMI,日常生活動作,喫煙の交絡因子を調整後でも,全身の骨密度とに関連性が認められたことから,骨粗霧症のスクリーニング法として歯科エックス線写真の有用性が示唆された。また,対象高齢者286名について,歯周病リスク因子のさらなる解明のために10年間の連続した歯単位情報を加味して解析を行った結果,歯周病進行が認められた79%の対象者にあっては部分床義歯装着が高リスクと判定され,歯単位では,部分床義歯の鈎歯,上顎歯,多歯根を有す臼歯のリスクが著しく高いことを示した。ミクロ栄養素と歯周病との関係を調べる目的で,オメガ3脂肪酸(ドコサヘキサエン酸(DHA),エイコサペンタエン酸(EPA))摂取量と歯周病発生・進行イベントとの関係を解析した結果,DHA,EPA摂取量が少ない高齢者の歯周病発生・進行リスクは多いものに比して約1.5倍であることが示された。なお,訪問調査による心疾患や脳血管疾患など全身疾患の発生状況の聞き取り,および,死亡調査を実施したが,これら重篤な疾患や死亡数はまだ解析に耐えうる数に達していないことから,次年度以降の調査データの蓄積を待つこととしたい。
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