研究概要 |
本研究は1998年から2008年にかけて実施した厚生労働科学研究「口腔と全身の健康」に関する10年にわたるコホート研究終了後のフォローアップ研究であり,血清ミクロ栄養素と下顎皮質骨密度との関係を評価することに加え,パノラマエックス線写真評価による下顎骨下縁皮質骨の骨密度低下に及ぼす血清栄養素,ビタミン,ミネラルの影響を調べ,高齢者の骨密度低下に対するリスク因子を特定することを目的に解析を進めた。解析対象者177名(77歳)について,密度によりC1~C3に分類した下顎骨下縁皮質骨の形態を従属変数に,残存歯数,性別,クリニカルアタッチメントレベルおよび血清中オステオカルシンを独立変数にし重回帰分析を行った結果,下顎骨下縁皮質骨の形態は残存歯数と有意な関連が認められたことから,下顎骨下縁皮質骨の形態は歯周病による歯の喪失を示唆するものと考えられた。また,全身疾患や死亡リスクについて,非喫煙群では,根面う蝕発症歯面数と心因性不整脈の発症について有意な関連(OR=5.84,p=0.040)が認められた(収縮期血圧の4年平均値がOR=5.89,p=0.001)。高齢非喫煙者では,根面う蝕発症は不整脈の発症に何らか徴候を与えている可能性が示唆された。腎機能低下は骨代謝や歯周病進行に影響していることを報告したが,さらに,70歳600対象者について腎機能の低下が心疾患に結びつき最終的に寿命に影響するのかどうかを評価した結果,カプランマイヤー法により腎臓機能の低下は心疾患の発症と関連するとともに,寿命とも統計学的に有意な関連が認められた。しかし,肺炎や悪性新生物とは有意な関連は認められなかった。
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