研究概要 |
本年度は、歯の喪失と癌の誘発についての文献をレビューすることにより、歯の喪失と癌の誘発とを関連づける可能性が高い要因を特定するとともに、要因の測定方法と分析方法を検討した。研究計画については、大阪大学大学院歯学研究科倫理審査委員会の承認を受けた。1)喫煙は癌と歯の喪失における共通のリスク要因であるが、非喫煙者に比べて喫煙者の歯周組織ではいくつかの炎症性サイトカインが上昇する傾向があり、癌の誘発に関連するサイトカインも含まれることがわかった。2)食生活調査票は、半定量食物摂取頻度調査法:SQFFQ(Tokudome et al. 2001)とFAS : Food Acceptance Score(杉原ら,1991)を参考に作成した。妥当性および例答時間について検討した結果、食物摂取頻度では124食品、食品摂取受容度では8食品を特定した。3)唾液中の硝酸塩還元細菌としてActinomyces odontolyticus, Actinomyces naeslundii, Veillonella atypieal, Veillonella disparを特定して、その定量法について検討した。4)歯の喪失状態の症型を決定するために、大阪大学歯学部附属病院の40歳以上の歯科健診受診者124人(男40人、女84人、平均年齢65±11歳)の診療情報をもとに、歯の喪失および補綴状況の予備調査を行った。欠損を有する者は81.5%であった。そのうち、義歯装着者は39.6%、ブリッジあるいはインプラント装着者は57.4%であった。また、欠損状況のパターンを分析した結果、"1歯欠損"、"前歯あるいは臼歯欠損"、"3ブロック以下の前歯および臼歯欠損"、"4ブロック以上の前歯および臼歯欠損"、"1ブロック以上の全歯欠損"の5つのパターンに分類された。
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