研究概要 |
研究の目的 障害を有する患者が最少の負担で最適な治療を受けられるよう支援する目的で障害者歯科における地域医療連携パス(以下パスと略す)を企画開発し、1年間パイロット的に施行した。 研究の方法 1)パスの項目を平成21・22年度におこなった実態調査の結果をふまえて連携医療機関関係者で協議を行い作成した. 2)lTベースでの情報提供・共有の方法についての検討をおこない、患者紹介機能を有する地域連携ウェブサイトを設置した. 3)倉敷地区においてパスを平成23年1月から12月までの期間パイロット的に施行した.第3次医療機関:岡山大学病院、第2次医療機関:倉敷歯科医師会口腔保健センター(以下センターと略す)そして第1次医療機関:倉敷地区の協力医とした。 研究成果 1年間のパスの運用では,センターと岡山大学病院との連携が10人で,そのうち知的障害・自閉症が7人であった.いずれの患者もセンター来院前の歯科治療経験では抑制治療を受けていたため,歯科治療の適応が極めて困難であった.そのため今回,大学病院における紹介患者の治療は静脈内鎮静法または全身麻酔法下での治療を選択した.治療終了後は10人ともセンターへ紹介した.岡山大学病院と倉敷地域の歯科医院との連携は3人であり、知的障害および高機能自閉症であった.治療内容はいずれも抜歯があり全身麻酔を選択した.3人ともに発達年齢が高く,患者の特性等についてパスに情報を添付することで歯科医院でのメンテナンスが可能となった.センターから地域の歯科医院へ紹介した患者は2人で高機能自閉症であった.患者はともにコミュニケーションには問題なくセンターでの適切なトレーニングと患児の障害特性をパスに添付することで歯科医院との連携が可能であった.以上より本パスを有効に運用し地域完結型医療を展開するためには、特に患者の障害特性を理解した第1次歯科医療機関を増やすことが重要と考えられた.
|