研究概要 |
適正な安静時唾液量の維持は,人々の口腔保健の維持向上およびQOLの向上には不可欠である。しかし,近年の調査から高齢者のみならず若年者においても口腔乾燥者がみられ,将来的に口腔乾燥症への移行が予測される。そこで,安静時唾液分泌に影響する因子を解明するとともに安静時唾液量を確保する方策を検討することは,健康な社会生活を送る上で重要である。 今年度は,女性若年者並びに高齢者の安静時唾液量と生活アンケートとの関係及び長期唾液腺マッサージ効果とストレス・ホルモンや性ホルモン濃度変動との関連について調べた。 1.若年者でも高齢者でも,唾液量が少ないと口渇感が強くなる。唾液量の少ないヒトでも唾液が少ないとは感じてなく,逆に多く出ていると感じるヒトがいた。唾液量の少ないグループでは,食事の好き嫌いが多く,軟らかいもの嗜好が強く,食事時間が長めであった。甘いもの嗜好で間食頻度が高い傾向を若年者で示した。日常でのストレス度には顕著な差は認められなかった。 2.若年者で安静時唾液量の少ないグループで唾液腺マッサージ1月後,3月後に唾液量の増加,コルチゾール濃度,テストステロン濃度の減少が認められた。高齢者では5月間の唾液腺マッサージで安静時唾液量の少ないグループで唾液量,口唇圧の増加傾向が認められた。 以上の結果から,長期唾液腺マッサージは安静時唾液量の少ない若年者や高齢者で安静時の唾液量を増加させることが示された。若年者ではこの効果はコルチゾールやテストステロン濃度の減少を伴い,安静時唾液量の調節と性ホルモンやコーチゾールの関連が示唆された。若年者での安静時唾液量の低下は食生活習慣,特に食事の好き嫌い,軟らかい食物,甘い間食傾向などと関連していることが示唆され,若年者での安静時唾液量低下予防には,唾液腺マッサージのみならず食生活改善の必要性が示唆された。
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